ブダペスト散歩①
雪が積もるとうちの加湿器がよく働く。
地面を雪が覆うから、湿度が下がるんだろうか。
今日の散歩は中央市場。
数センチの積雪で、市場の前の広場もいつもと違った顔になる。
仕事場から近いわりにはあまり来ないので、カラフルな遊具のある公園や、地下へのエレベーターシャフトなど新しいものが増えているのに気付く。
でも、ここから見えるゲッレールトの丘とそのてっぺんの像は変わらない。
市場付近にいる人々も変わらない。
赤信号で私の左側のおじいさんが渡ろうとする。
走ってきたTAXIがスピードを落としてクラクションを鳴らし、『どないなっとんのや』と身振りで抗議する。
おじいさん、歩道へ戻り、運転手へ片手を振ってみせる。
『分かったわいな、もう渡らんからはよ行かんかい』
とでも思っているのか。
私の右側のご夫人が皆に聴こえる様につぶやく。
「赤だってのにゆっくり渡るなんてねぇ、まったく」
その間、車が数台走っていく。
車の波が途切れたら、先ほど意見を述べたご婦人がゆっくりと横断歩道を渡っていく。
信号はまだ赤。
中央市場は広い。
1階部分では生鮮食品、野菜、乳製品、パン、肉、蜂蜜、酒、香辛料などが売られている。
地下にも店があり、魚やアジアの食材も手に入る。
冷凍だが、マグロの塊や刺身になった白身の魚なんかもあった。
値段が相当高かったが、『いいちこ』も一度見かけたことがある。
2階は観光客向けの刺繍やお土産、ビュッフェ。
この市場は、東駅や西駅に似た大きな倉庫のような造りで、天井がすごく高い。
なんとなく空間がもったいないなと思ってしまう。
私がよく行くレヘール市場と比べると、空間や通路が広く、お客の年齢層も低いようだ。
レヘール市場では、座る場所がいたるところにあるがそれもそのはず、来ている人たちは10歩進んだら一休みしたいという年齢。
コロコロのついているカバンによりかかるようにして、えっちらおっちらやっている。
帰る頃にはカバンはぎっしり、トロリーに乗るにももちろん人に助けてもらうのだが、助ける側もその重さにびっくりということもしばしばだ。
さて今日の中央市場。
雪のせいか、すこし閑散としていた。
真ん中から先は、人が極端に少なかったので行かないことにする。
八百屋がたくさんあるので値段比べをするのもいいが、今日は楽器もあるし疲れているので目当てのものだけ少なめに買う。
売り子のお兄さんが愛想なくつぶやく。「485フォリント」
本当は聞こえなかったのだがだいたい500くらいだろうと踏んで、1000フォリント札を差し出す。
その頃には袋をくれないことに気付いたのだが、今更頼むのも面倒だし、袋にお金を払うのも嫌なのでにんじんとカリフラワーはナマでかばんに入れることにする。
帰途に着く。
出口までの間に誘惑に負け、ポガーチャを買ってしまう。
出口のカーテンを出たとたん、煙にむせる。
出た所でかたまってタバコを吸う、おじさん、おばさん。
トラムに乗り込みつつ、半身乗り出して最後の1吸いを味わってから、吸殻を道に落とすお兄さん。
非喫煙者が嫌な思いをしない街に、ブダペストは果たしてなるだろうか。。。
どうだろうか。