宮城県民会館のためのコンサート

1月26日に国立コンサートホールにて行われました。

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県民会館は復興のめどのたっていない会館の一つだそうですが、そのことを聞いたフィッシャー アダムが、なんとかならないかと放送交響楽団や国立コンサートホールと協力して行ったコンサートが、『ワーグナーの夕べ』です。

宮城県民会館ではうちのオケも何回も演奏しており、一番最近では2004年の日本ツアーで演奏したのが最後だそうです。

始めは収益を日本へ送りたかったそうですが、この不況のおり、チケットの売れ行きが悪く、日本のどこへ送れば会館再生に活かされるのかといった情報も少なかったとかで、結局は「応援する気持ちを発信しよう」というだけの、なんともあいまいな形で終わったのでした。

フィッシャー アダムは本当に残念そうでした・・・。

企画はうまくいかなかったにしいても、もうすぐ1年を迎えるこの時期に、また改めて日本について考える機会を与えてくれただけでも価値はあったと思います。
お客さんもたくさん来てくださり、日本人の顔もたくさん見えました。

始めに、『神々の黄昏』から葬送行進曲を演奏し、その後でアダムがスピーチをしました。

日本の現状、宮城県民会館や仙台フィルの状況を説明し、日本人の文化への姿勢には見習うべきものがあるというようなこと、1000年の歴史を持つ日本の文化へ、西洋人も敬意を払って興味を持つといいということ、(日本でもハンガリーでも)医療や教育は第一に大事なことではあるけれども、文化も忘れてはならないということを、紙にメモしてあったのを読み上げていきました。


その後のタンホイザー序曲では、スピーチの内容と、震災後いろいろと見聞きした被災地の人々の様子、頑張っている日本の人たちのことを考え、アダムの渾身の指揮ぶりに思わず目頭が熱くなりました。

音楽の持つ力を知っているからこそ、この仕事を続けているわけだけれど、本当に、どれだけ伝わるのかと、悲しくなってしまうこともあります。


ちょうどその日、オケメンと合唱メンバーから、寄せ書きをしてもらいました。
これは宮城とは別件で、ブダペスト在住のある日本人ピアニストが去年福島でコンサートをしたことがきっかけで、現地の方々が応援の言葉を待っているということを知り、その話を聞いた私が、「だったらオケの人に書いてもらう!」ということで実現しました。


練習開始前にみんなの前へ出て事情を説明し、メッセージを書いてくれるよう頼んだところ、A4紙を10枚つなげた紙がいっぱいになるまで書いてくれました。
面白かったのが、意外とみんな慎重で、「何を書くか、午後考えてくるから」と言った人も多かったことです。フィッシャー アダムと、オペラ座の歌手も書いてくれました。


現在は、そのメッセージを翻訳中。できるだけ丁寧な言い回しが伝わるように苦心しています。ハンガリー語の内容はよく分かるのですが、日本ではこういう時どういうんだったか、同じような言い回しがないぶん、難しいです。
翻訳が終わったら、前述のピアニストが福島へ送ってくれるそうです。
福島で3月末に行われる「ヴォーカルアンサンブルコンクール」で貼りだされるそうですので、たくさんの人に読んでいただければ、こんなに嬉しいことはないです。